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このページでは舟宿にまつわるいろんなお話、屋形舟の歴史をご紹介しております。
不定期ではございますが少しづつ更新して参りますので、お楽しみください。ぜひご意見・ご感想などお寄せください。

江戸前

いま東京湾が注目されています。
汚染された海、というイメージだった東京湾が変わりつつあるからです。

「江戸前」とは、江戸の前の海、すなわち東京湾のこと。
江戸前天ぷらや江戸前寿司は江戸湾でとれる新鮮な魚貝類をつかったものということになりますでしょうか。

先代の投網の様子先代の頃は、舟で投網を打って魚を捕り、その場で刺身・洗いにしたり、天ぷら・唐揚げに調理してお客様にお出ししておりました。

東京湾は太平洋の黒潮と内湾からの水がぶつかるため、多様な生物が住む海なのだそうです。 恵まれた海だったのですね。

狭い意味の江戸前は芝や品川沖のことを指すそうですが、このあたりでイカ釣りが出来ました。大漁ではお客様も大喜び、昼食にとれたての新鮮なイカの刺身を食べ、お土産に沢山のイカを持って帰るのですから。

私たちは、戦前から屋形舟や釣船の他にも、漁をしたり、青海苔をとったりして、美しい江戸前を生活の糧としていたのです。

昭和30年代から汚染のため悪臭がひどくなり、柳橋の料亭街も少しずつお客様が減り始め、舟遊びをする人もいなくなり、小松屋もとうとう舟宿を一時休業となったのです。

その当時の汚染がいかに凄かったかと言えば、釣りのお客様にお出しするため、大きな竃(かまど)で炊いたご飯をお櫃(ひつ)に入れなおしたものですが、朝ピカピカに磨かれたきれいなお櫃の箍(たが)が、夕方には、メタンガスのためでしょうか、真っ黒に変色してしまうのです。母が、その都度磨いていたのを思い出します。

考えてみると東京湾の汚染は、つい最近、それも短い期間にひどくなったのですね。

日本の復興と発展に伴って、汚れてきた江戸前。景気が一段落した昨今、海が戻ってきたというのは皮肉な感じがします。

ビッシリ張り付いたフジツボ小松屋が屋形舟を復活させた頃(昭和52年)は、舟の底にフジツボが数えるほどしかつかなかったのですが、最近はビッシリ張り付くようになりました。それだけ川や海が戻ってきているのかもしれません。

21世紀に入って世界的に環境問題に関心が集まっていますが、少し変な天候がつづくと「異常気象?環境の影響!?」と思ってしまいますね。

一時期に比べると、水質は、年々よくなっている話は聞きますが、昔のような隅田川、東京湾に戻ったわけではありません。

かつて、子供だった父(先代)が、神田川や大川で近所の子供たちと競っては飛び込んで泳いでいたそんな時が訪れるのでしょうか?

願わくば、昔の江戸前のように美しい海になってもらいたいものです。

J-WAVE [TOKYO LABORATORY] 『東京湾を極めよう』

屋形舟今昔「陸(おか)に上がった舟」

2007年6月

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