柳橋のお正月
さて、今回はお正月の柳橋の風景にふれてみましょう。
柳橋は芸者置屋、料亭がたくさんあったところでしたから、お正月の様子は余所と少し違っていました。お正月の恒例で、芸者さんがお世話になっている料亭などに新年のご挨拶にまわります。
日本髪に、黒紋付に*裾模様、そして髪には稲穂のかんざしという正装で新年を祝います。
そして人力車に乗ってご挨拶にまわります。その容姿はまさに「いなせ」という表現がピッタリ来ます。今風に言えば、色っぽくて、カッコイイといったところでしょうか。
そんな光景を柳橋のあちこちで見ることができました。 いつものお姐さんたちも、正装すると一段と格好良く見えたものです。
小松屋の女将も子どもの頃は自分の髪で日本髪を結ってもらって、お正月を迎えたそうです。髪を結い、着物を着ることはうれしかったそうですが、一つ大変だったのは眠るとき。せっかく結えた日本髪が崩れないよう、時代劇に出てくる「箱まくら」を使うのですが、これが慣れないと眠るのが難しかったようです。
現在では、黒板塀の料亭さんも無くなり、柳橋の芸者衆も姿を消し、柳橋の風景もすっかり変わってしまいました。
古き良き時代の柳橋正月の風景でした。
*腰から下、裾(すそ)の部分のみに柄付けされた着物。お正月の絵がらは松・竹・梅の図柄が多かったとか。裾には真綿がはいっており、裾を引きずる着方をします。こうした着方は、現在では花嫁姿に見られるくらいです。
出かけるときは裾を持ち上げて歩きます。裾を持ち上げると襦袢(じゅばん)今でいう下着が見えるのですが、これは見えてもよいもので、この襦袢にも鮮やかな模様があります。
2003/1/1