船場新香(ふなばしんこ)
- 新鮮なキャベツ、キュウリ、大葉。
これらが材料になります。 - これらを刻みます。とってもシンプルです。
- これを漬物容器に入れ、出船前に押します。
- さあ、どうぞお召し上がり下さい。
シジミのおみそ汁と相性はバッチリです。
タイトルをご覧になって、何のこと?と思われたかもしれませんが、屋形舟でお出ししておりますお新香(しんこ)のことです。
材料はキャベツ、キュウリ、大葉。歯ごたえを少しでも保つため、輪切りにするキュウリも厚めに切ります。切ったものを塩でもみ、押して漬けます。
お好きな方はこれに醤油をひと垂らし。これが「船場新香」です。
昔、小松屋で船遊びを楽しまれたお一人に、作家・戯作者(げさくしゃ)そして俳人でもある久保田万太郎(くぼたまんたろう)さんが、よくお見えでした。
その久保田万太郎さんが「これは、おいしいね。『船場新香(ふなばしんこ)』と呼ぶといいよ。」と命名して下さったのです。
特別な作り方をしているわけではありませんし、どちらのご家庭でも、昔からよく作られている普通の浅漬けですが、天ぷらに舌鼓し、炊きたての御飯とシジミのお味噌汁。そしてこの「船場新香」。
サッパリとしたこの脇役は、実に粋(イキ)な名前を付けていただきました。
- 雑誌に掲載された小松屋の玄関先での万太郎さん。この写真は現在の店舗ではなく、昔の店先で撮影されたようです。(残念ながらどの雑誌に掲載されたものなのか、今のところ不明です)
名付親の久保田万太郎さんについてご紹介いたしましょう。
明治22年、浅草田原町に生まれ、慶応義塾大学在学中に「三田文学」に小説、戯曲を発表し文壇に登場します。
母校慶應義塾大学で教鞭をとり、その後は東京中央放送局(日本放送協会)に勤め、後に文学座を結成し、 演劇界の指導的地位を占めることになります。
戯曲、脚色、演出、劇評など、まさに八面六臂の大活躍。現在のタウン誌とも言える「銀座百点」でも対談を重ねていました。
俳誌「春燈」も主宰し、句集も出版しています。
- 初日記いのちかなしとしるしけり
- あじさいやすだれのすそを濡らす雨
- 神田川祭りの中をながれけり
- しらぬまにつもりし雪のふかさかな
- 〈前書〉人をうらめば、ひともまた、われをうらみてしどもなや、月かげの、きえてあとなし、ゆめぞとも、
- いつふりいでて、閨(ねや)の戸に、いつつもりたる雪の嵩(かさ)
お新香から俳句の話題までなってしまいましたが、この一連の俳句を読んで、ついついご紹介したくなってしまいました。どこか心にしんとしみ入る句ばかり。
「船場新香」の名付親の久保田万太郎さんが、こんなすごい方と改めて知って、ちょっと気恥ずかしいのも本当の気持ちです。
さあ、今日も腕によりをかけて、おいしい「船場新香」をつくりましょう。
※季節により新香の内容、種類は変わります 2013年11月1日
2005年7月1日